1929年の開業当初より、狭軌鉄道の電車としては当時日本最大級の、強力な全鋼製電車を投入し、高速運転を実施した。
大出力モーターを装備した大型電車によって線形の良好な高規格新線で高速運転を行う、という米国のハイスピード・インターアーバン(高速都市間連絡電車)流のコンセプトは、1927年に開業した京阪電気鉄道傘下の新京阪鉄道(現・阪急京都本線)と共通のものである。米国のインターアーバンは自動車におされてすでに衰退期に入っていたが、シカゴ都心への直通のために、線形や車両規格の改善を図ったノースショアー線、サウスショアー線など、大都市近辺の路線を中心に路線や車両の高規格化を行って生き残りを図るケースがあり、これを見習ったものと考えられる。
主力車となった全長19mの大型電車モヨ100形・モタ300形等は、腰高で屋根が高く、窓も小さく、さながら装甲車両を思わせる物々しい外観を備えていた。実際にきわめて頑丈な構造で、電動車では47t - 48tもの超重量級に達したが、電動車1両で600kW(800馬力)の大出力は、それを補って余りあるものであった。この系統の電車群は1937年までに48両が製造されている。
その電装品は東洋電機製造製の国産品で、当時の電車用としては日本最強クラスの定格出力149.2kW(≒200馬力)を発揮する大出力モーターをはじめとして、きわめて高度な仕様であった。また自動空気ブレーキは、アメリカ・ウェスティングハウス・エアブレーキ社(Westinghouse Air Brake Co.:WH社、あるいはWABCOとも。現Wabtec社)の設計になる長大編成対応ブレーキを特に採用、当時の日本の電車が通常でも最長4両編成程度が限度だったところ、阪和では6両編成以上が可能であった。
これらのスペックは新京阪鉄道が開業時に投入した大型大出力電車P-6形(デイ100形)とほぼ共通で、経営・技術両面における京阪の影響の強さを推察できる。
高規格軌道・貨物列車対策 [編集]
当時としては未曾有の優等列車の超高速運転を実現するため、電車自体の性能強化以外にも可能な限りの方策が講じられていた。
この高速電車の性能を十分に活かすため、軌道設備も50kg/m相当の重軌条[5]を用いた当時の国鉄東海道本線に匹敵する破格の高水準とし、輸送密度の関係からか架線へのコンパウンドカテナリ[6]の導入こそ見送られたが、それでも通常構造ながら重い架線を用いたシンプルカテナリが採用され、100km/hオーバーでの高速運転への備えは万全であった。
また線内には貨物列車も運行されることになったが、電車列車のダイヤ組成の障害にならないよう、専用機関車として駿足な本線用電気機関車「ロコ1000形」を新規に開発した。そしてこの機関車が牽引する貨物列車は、後発の電車列車に追いつかれないために、軽量な短編成による高速運転を行って待避可能駅に逃げ込ませることを運用の前提としていた。
ノンストップ超特急 [編集]
和歌山までの開業当初は、阪和天王寺 - 阪和東和歌山間の61.2kmを「急行」が65分(各駅停車は80分)で結んだ。その後も路盤の安定に伴ってスピードアップをくり返し、1931年7月に天王寺 - 東和歌山間をノンストップ48分で走破する「特急」を運転開始した。
この特急は、1933年12月に阪和天王寺 - 阪和東和歌山間45分運転へスピードアップされ、種別を「超特急」に改める。この時の表定速度81.6km/hは、営業運転される定期列車としては1950年代以前の日本国内最高記録で、戦後に国鉄特急「こだま」号が東京 - 大阪間6時間40分運転(表定速度83.46km/h)を開始した1959年まで、実に26年間も破られない超絶的レコードとなった。
同時期、日本資本で経営されていた南満州鉄道の著名な特急列車「あじあ」号(1934年運転開始)は標準軌路線での運転で表定速度82.5km/hであったが、阪和超特急は狭軌線ながらそれにも匹敵する水準に達していた。
阪和間に限れば、超特急の消滅後はるか後年の1972年3月ダイヤ改正で設定された新快速が45分のタイ記録を達成するまで並ぶものはなかった[7]。そしてこの45分の壁は、1996年に特急「くろしお」等の120km/h運転による所要39分(表定速度94.3km/h)まで、63年間も破られなかったのである。
阪和電鉄の線路条件はおおむね直線で良好であったが、県境の山中渓駅付近には急勾配区間急曲線があり、振り子式車両のない当時としては、平坦区間で極限の高速運転が為されたことが容易に推察される。阪和間45分運転を行うことは電車にも大きな負担をかけ、駆動歯車は鋸歯状になるほど消耗したという。
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